scene7 ワールドリンクトラベル
「真魔石が何故5個も要るのか。そのことを話すにはある資格のことを知っておく必要があるわ。」
「資格?」
「ええ、地球上では数千年は待たないと出てこないであろう資格のことを。」
魔法石の更に力を持っている真魔石。更にこの世界郡特有の職業。この二つが揃ったとき、二人は地球に帰ることが出来るというのか。未来は、これからの彼らの行動にある。
「必要な資格、それは、『ワールドリンクトラベル』という資格。その資格を持ってる者は俗に『ワールドトラベラー』と呼ばれるわ。」
「その『ワールドリンクトラベル』ってどんなことが出来る資格なんだ?」
「ええ、今から説明するわ。」
ユカはソファーからスッと立ち上がって窓際に寄り、空を眺めた。
「『ワ-ルドリンクトラベル』、それは、数多の人間界を移動できる資格。」
「!」「!」
「まだ、人間界が他にもあるのかよ!」
「地球以外にもここにも人間界があった。なら、まだ人間の住む世界があっても不思議じゃないでしょ?」
トオルは立ち叫んだが、座り直した。
「厳密に言えば世界というより惑星ね。で、それらの世界も、勿論地球より科学は進んでいる。そんな世界がここを入れて38箇所。今これらの世界の共同研究で発見されている人間界の数は39箇所。その数からはみ出している残りの1箇所、それが地球。つまり、地球は発展途上惑星どころか、古代文明、いえ、原始人未満の惑星ね。」
「ということは、その38箇所の惑星に移動出来るってことですね。」
「ええ、一応これらの世界は地球文明の発展のために、接触は試みてるけど、地球の場合はアメリカの宇宙開発会社NASAがそれを拒み、事実をひた隠しにしている。地球上でUFOって騒いでるのは、この世界、セントラルの巡視艇よ。」
「へぇ、じゃ、この世界は進んでて地球は遅れてるってことか。」
トオルがユカの話に納得している中、エミは黙って考えていた。そして顔を上げユカに訪ねた。
「ユカさんは地球人なのでしょう?ならどうしてこんなにここの世界のことに詳しいんですか?」
ユカは核心を突かれたかのように驚いた。
「…それは、また今度話すわ…。」
ユカは暗い顔をした。
「さ、それより話の続きよ。ワールドトラベラーに必要なもの、それがこの魔法石。」
暗い表情を払拭し、ユカは右手に持っていた魔法石を、胸の前に持ってきた。
「この魔法石の力によって、世界を行き来することが出来るわ。地球に帰るときに真魔石が必要なのとは違って、こちらは38の世界郡が共同開発した補助装置を使って移動するから、魔法石1個でも充分なの。」
「なあ、ユカ。何でその資格が必要か話したのか。それはもしかして、その資格を取らないと行けないところにも真魔石があるということか…?」
「ええ、その通り。真魔石は色々なところに飛散しているからね。」
「…ユカ。」
「何?トオル?」
「説明、それで終わりか?」
「いえ、まだ――、」
「その『ワールドトラベラー』になるための話だろ?」
「よく分かったわね。その通りよ。」
「俺はもう全部分かった。『ワールドリンクトラベル』が資格ってんなら、試験みたいなのがあるんだろ?なら、その『ワールドトラベラー』の試験が行われている場所を教えてくれ。俺たちは時間が無ぇんだ。」
ユカはそのトオルの真剣な瞳を見つめた。トオルは焦ってるように見えるが、その奥に確固たる信念があるように見えた。
「いいわ、『ワールドトラベラー』の試験会場を教えてあげる。けどね、真魔石を集めるには並みの体術じゃどうにもならないわ。」
「どういうことだ?」
「分からない?所有者のいる真魔石もあるかもしれないのよ。それも簡単に譲ってくれるはずが無い。それに相手が容赦なく襲ってきたらどうする?この世界は地球と違って体術に優れた奴が多い。更にそこに魔法石の力も使ってくるわ。」
トオルは今のユカの言葉を聞き、少しひるんだ。だがそれは一瞬というにも短い時間だけだった。そしてユカに言葉をぶつけた。
「別に相手がどんなに強かろうが、倒して突き進んでやる!」
ユカは少し微笑むと、トオルの後ろで座っているエミに話しかけた。
「エミちゃんはどう?」
「私は、トオルに付いて行きます。」
「そう、分かったわ。」
ユカは再びトオルの方を見つめなおすと、言葉を放った。
「明日からトレーニングをやるわよ。勿論これは、魔法石を使いこなす力、強い敵と戦う力のための特訓。『ワールドリンクトラベル』の試験の内容は私も知らないからね。」
「ああ、何でもやってやる!」
すると後ろで座っていたエミが突然立ち上がった。
「あの、私もやります!」
「分かった、でもエミちゃんは別メニューね。」
「はい。」
ここに、『ワールドトラベラー』になるため、真魔石を探すため、二人の少年少女が立ち上がった。やはり地球に帰るまでの道は長く険しいものだろう。だが、この二人にはこれしか道は無い。この二人がここへ来たのもまた運命。
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