scene5  地球ではない

「ここは、勿論日本じゃない、且つ地球でもないところよ。」
「!」「!」
トオルとエミは驚きを隠せなかった。いや、どうして驚きを隠せるものか。驚愕の事実を突きつけられた二人に、最早何も分からなくなった。
「え…!じゃあここはどこなんだよ!?」
「…ついていらっしゃい。」
どうせ行くあても無いので、二人はこの女性についていくことにした。

女性の邸宅に入ると、言われるがままに、リビングのソファーに座った。女性はトオルたちの向かいのソファーに座り、話してきた。
「いきなりあんなことを言われて驚いたでしょう。私の名前は岡山優花(おかやまゆか)。あなたたちと同じく、日本から来たわ。」
二人は驚いた。同じく日本から、訳の分からないところへ飛ばされた人が居る。徹が尋ねた。
「ここは…どこなんだ?」
ユカはゆっくりと話し始めた。
「この世界は中央界(セントラル)と呼ばれるところ。地球外で人間が住んでる星よ。」
「マジかよ…。」
「地球以外の…、人間が住んでいる世界…。」
ユカは再び説明を始めた。
「ここはセントラルの世界で最も大きな都市、セントラルシティの郊外。セントラルシティでは地球の文明など足元に及ばない、数千年後を見ているようなところよ。」
「数千年後…、そこまで文明の進んでいる世界なのか、ここは。」
ユカは話を切り替えた。この世界のことを話していたらキリが無いと判断したためである。
「話は変わるけど、あなたたち、ここへ来るとき何か変なもの拾わなかった?」
トオルとエミは、すぐそれに思い当たる節が浮かんだ。
「トオルが拾いました。紅くて綺麗な宝石みたいなやつを。」
トオルは隣でうなづいた。ユカはエミの話を聞くと、トオルのほうに顔を向けた。
「トオル…ね。その宝石、どうしたの?」
「どうって、こっち来た後も手の中にあったからとりあえずポケットに。」
「ナイスよ、トオル。それこそがこっちに移動するために使われたものよ。」
「え!?」
「それを私に渡してちょうだい?」
トオルはズボンの右ポケットから光る円い石を出した。そのまま手を出しているユカの上に置いた。ユカはじっくりとその石を眺めると、確信の表情をし、手前にあるテーブルに置いた。
「あ、そうだ。重要なことを訊き忘れてた。かといってユカが知ってる保障は無いけど。」
思いついたようにトオルが喋りだした。
「地球に帰るにはどうすればいいんだ?」
今現時点での最重要項目である。これが分からなければ、一生地球に戻れない可能性だってある。ユカは表情を曇らせた。
「方法が無いわけではないわ。けど、その条件は非常に難しいこと。私達の達成できる可能性は無いに等しいわ…。」
ユカの発言のあと、トオルは叫ぶように言った。
「何だよ!方法があるじゃねぇか!0に近くても構わない。可能性が無いわけじゃないんだろ?なら教えてくれよ。」
ユカはそのトオルを見て、再び話し始めた。
「そんなに戻りたいの?ここは地球より大分環境が豊か。尚且つ地球人が居ないわけでもないのよ。」
「でも、私達は戻りたいんです。」
「私も最初は戻りたい、そう思った。けれどここはとても過ごし易かったの。だから私はここに残る選択をした。」
トオルとエミは一瞬言葉に詰まったが、やはり意思は変わらなかった。
「いいや、戻る。俺たちには地球に家族や友達がたくさん居る。そいつらと離れたくないから。」
ユカは二人の意志の強さを確認した。
「分かったわ、話しましょう。けれどそれには、特別な石と、この世界特有の資格の話が必要になってくる。全てが絶望的な道をたどるお話だけど、それでもいい?」
トオルたちの返答は決まっていた。それはユカも分かっていた。
「話してくれよ。どんな道でも帰るためだったら何でもするぜ。」
「私だってトオルと同じです。早く地球に帰りたい。」
「OK。じゃあ話すわよ。全部が複雑だから、聞き漏らさないようにね。」

これからユカからトオルたちが地球に帰るための話を聞かされる。それはトオルたちにとってどういうものなのか。何故可能性が無いに等しいのか。その答えは全てユカが知っている。知っているからこそ、ユカは見解を述べることが出来た。トオルとエミ。この先待ち受けるいばらの道は、この世の何よりも長い道となる。

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