scene4  運命はここで動き出す

運命は切り替えられた。

昨日、桐島高校の合格発表があった。見事、徹、絵美、石川の三人は合格した。桐島高校の入学式は4月9日、つまり春休みはあと18日間ある。いわばこの期間は高校入学の準備期間である。
「絵美、今日あの場所いかねーか?」
「あの場所?いいよ。」
つい先程、徹と絵美が電話で話した内容である。

あの場所とは、徹たちの住んでいる街が一望できる小高い丘。この丘の一角は公園になっている。だが徹たちの行く場所は、公園の隅の林の裏、いわば穴場である。ここは公園よりも街が綺麗に見える。徹と絵美は昔、ここによく来ていた。
「久しぶりね、3年ぶりよね?」
「ああ、中学入ってから一度も来てなかったからな。」
二人は懐かしさをかみ締めるように、眼下の景色に見入ってた。ふと、徹は足元の何かに気付いた。
「何だこれ?」
徹はそれを拾い上げた。綺麗な楕円体の石。半透明で、内側から光っている。
「何?…わー、綺麗な石。どうしたのこれ?」
「どうしたのって…ここに落ちてた。」
「え…。」
二人は不思議に思った。ここは、自分達以外知らない場所と言い切ってもいいところだからだ。その石は不思議だった。紅く輝き、その光は繊細で、且つ力強かった。二人とも自然とその石に集中した。いや、その石に完全に魅せられている。すると石の光が徐々に強くなっていくような気がした。
『パァッ!』
大きな光が二人を包んだ。

闇だ、途方も無い。どこが上か下か分からない。立っているのか浮いているのかも分からない。白くまばゆい光が一点見えた。

気付くと二人は見たことも無い土地に立っていた。あの闇は1秒も経たない、一瞬の出来事だった。
「何が、…起こったんだ…?」
「なんだったんだろう、今の?」
二人は一瞬の出来事に何も分からない。今分かっていることは、見知らぬ土地にいること。周りが森に囲まれた道の真ん中。人工的にならされたようだが、舗装はされていない。道の上から、森の中にまぶしいばかりの日光が入ってくる。


「!」
茶髪の女性は何かを感じた。第六感が大きく反応した。自分にとっての利害は分からない。だが、自分に関係のある何かが動いたような気がした。点いたままのテレビをほったらかしにし、家の外へ飛び出、丁度自分が始めてこの世界へ来た辺りに走った。


知らぬ間に見知らぬ土地に来た二人は、呆然としている。何をしていいか分からない。突然ここへ来たのだから、ここに居たら元の場所に戻れるかもしれない。だからここを動けない。
「ねぇ、トオル。」
「何だ?」
「気付いてた?名前呼ぶとき漢字から片仮名表記になってるの。」
「何!?マジか!?エミ、エミ、本当だ!」
トオルが頭を抱えて混乱していると、向こうから人が歩いてきた。茶髪の、スラッとした綺麗な女性だ。
(あの人にここがどこだか聞いてみようかしら。…いえ、でも言葉が通じないかもしれない。けれどいきなりそんな場所に飛ばされるような非現実的なことがあるかしら…。)
エミが考えている間に、女性は手前まで来ていた。すると女性は自ら立ち止まり、こちらに話しかけてきた。
「多分…あなたたちね。私はあなたたちを待っていたわ。」
「え!?」
トオルがこちらに気付いた。
「待っていた…って?」
茶髪の女性は表情を強張らせ、静かに言った。
「あなたたちが日本語を話すということは日本人ね。」
「ええ、そうですけど…。」
「なら言葉も通じるし、話は早いわ。」
トオルとエミは固唾(かたず)を飲んだ。
「ここは日本では無いし、更に地球でも無いところよ。」
「!」「!」

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