scene23 高額賞金首
お金を払い見返りにもらった情報は、賞金首に関することだった。店主は1枚のA4サイズのシートをカウンターに置いた。そのシートの手前側には、ボタンのような形が印刷されており、その奥側には大きな枠が囲ってある。
「これは賞金首リストだ。発布順、賞金順、色々な形で閲覧することが出来る」
トオルは恐る恐るリストを見ようとした。そこで一言漏らした。
「使い方が…分からない…」
―――。
代わりにレイトが操作し、賞金首リストを見ることにした。店主は、使い方が分からないトオルのことを、店の奥で笑っている。しかしこの世界の住人じゃないトオルには、分からなくて当然なである。このリストにはかなりの人数が載っている。1ページに2人の情報、それが461ページ。922名もの賞金首がリストアップされている。レイトは『高額賞金順』に切り替えた。店主は奥から帰ってきた。
「お、高額目当てか。でもそれだと強いぜ?」
「いいんですよ。ちょっと調べたいこともあるので」
NO.1、賞金2億4500万、ルート・リンズヘラー。推定年齢35歳。性別、男。
特徴、左手人差し指が無い。推定身長190~200cm。
NO.2、賞金2億2000万、レイト・セールメント。推定年齢18歳。性別、不明。
特徴、首にタトゥー。推定身長175~180cm。
NO.3、賞金1億9600万、パッソ・クィール。推定年齢22歳。性別、男。
特徴、刀を所持。推定身長180~185cm。
「流石にここまでの奴らだと写真が無いんだ。こっちも写真が手に入ったら繁盛するのによぉ」
店主はやや不満げに話した。と、トオルが横から覗き込んで言った。
「この2番目の奴、推定18歳だって。若ぇなぁ」
「う、うん、そうだね」
レイトはやや表情が強張っていた。
「レイト、どいつ狙う?こんな奴ら俺らじゃ無理だぜ。もっと数万単位のでいいんじゃねぇか?」
「ボウズの言うとおりだ。そっちの方が懸命だよ」
「…そうだね…」
レイトは低額賞金順に切り替えていた。
二人は適当に調べ物をした後、店を出た。しかし依然レイトの表情がおかしい。
「どうした?レイト…。あ、あれか」
「え!?」
「お金か。ゴメン。悪いな、払ってくれて」
「あ、うん。ま、そのことじゃないけど、…別にいいよ」
二人がしばらく歩くと、レイトが断った。
「ゴメン、少し一人にしてくれないか?」
公園の隅にある手洗いの、一番奥の個室に入っていた。
(まさか…あれ程上がってたなんて…。道理で…)
握った拳の背を壁に押し当てている。顔色は悪い。
(感付かなかっただろうか…)
レイトはトオルのところへ戻った。
「大丈夫か?レイト」
「ああ、全然大丈夫だよ」
二人は、ファイヤーと接触したあの日、公園で身の上のことを話し合った。そこで見つかった共通点。二人共に両親を亡くしていることだ。
とりあえず二人はこのリースランを抜け、郊外の町、グリンバール向かうことにしていた。ここからさほど遠くは無い。何故そこに行くのかは、別に理由など無い。晴れてワールドトラベラーになり、別世界へワープするのか。いや、それはこの都市の方で行う方が円滑に出来る。あえて言うならば、入手したい品がたまたま近くの店で売り切れだったので、都心部にある店よりも近い、郊外の町へ出向くことにした、というところだろうか。兎にも角にもワールドトラベラーとなったトオルたちには、これから沢山の試練が待っているだろう。
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