scene22 本名 from 情報屋
「少し、お話させていただいても、よろしいですか?」
「…別室で話そうか。」
そして3人は別室へ向かった。トオルはとりあえず受付ロビーで待つことになった。
3人とも別室に入ってすぐに、レイトが話し始めた。
「これはどういうことなんですか?」
免許証を2人に見せた。
「僕はレイト・イスペリーの名で登録したはずですよ?」
「やっぱりそのことか。」
トージがおもむろに話し始めた。
「こちらで調べさせてもらったよ。ちゃんと本名で登録しないと、免許は無効になってしまうからね。」
「しかし、こんなものを持っていたら自ら正体をバラしているようなもんです。」
今度はメールが答えた。
「その点では大丈夫。いちいち免許証の提示なんて求めるところは無いわ。無免許でトリップしたらその場で魔法石に魂を焼かれる。いくら頭の悪い奴もそんなことはしない。だからトリップ出来る人は皆有免許者。それが分かるからその証明書自体は意味の無いもの。」
レイトは一歩下がった。密室。ドア側に居るのは向こう二人。
「大丈夫だよ。別に君をどうしようって訳じゃないから。」
レイトは少しばかり反応した。
「どの世界の人でも、どの身分の人でも、どの立場の人でも、唯一平等に試験を受けることが出来、平等に資格が与えられる。それがワールドリンクトラベルさ。」
ロビーの奥から3人が出てきた。
「トオル、終わったよ。さあ行こうか。」
レイトの爽やかな声に安心し、相槌を打った。
「じゃあ、お二人とも、お世話になりました。」
レイトは丁寧に挨拶をし、トオルと共に建物を出た。
「なあレイト、何の話をしてたんだ?」
「別に何でもないよ。」
二人は受験後の行き先は大して決めていなかった。そして、やることすら殆ど無い。トオルの目的である真魔石を探すにも情報がなさ過ぎる。とりあえず二人は、リースラン市内を歩き回り、情報屋なるものがないかと探すことに決めた。しばらく歩いていると、そんな感じの店が目に入った。
「情報屋『JOKERS』、か。なあレイト、ここどうだ?」
「入ってみようか。」
カランカラン
こじんまりとした店内。店はとても狭く、入ってすぐにカウンターがあった。既に2~3人の客が居たが、あと3~4人くらいでカウンターが満杯になりそうだ。
「はい、どんな情報がお望みかな?」
たくさんの髭を蓄えた気前の良さそうな30半ばくらいの店主が出てきた。
「えっと、真魔石についての情報ってあるか?」
トオルが期待有りげに訊いた。すると、その店主、他の客がみんなこっちを向いてキョトンとしている。が、客はすぐに自分の手元のリストに目を戻した。そして店主は大笑いした。
「ガッハッハ!真魔石はお前にゃ早いぜ、ボウズ。」
トオルはちょっとムッとした。
(身長170cmの俺をボウズだと…!?)
「まあ、どっちにしろ真魔石の情報は置いてねぇんだ。こっちも情報を買って客に売るんだが、真魔石の情報は高いんだ。」
トオルは少し拍子抜けな表情をした。レイトも少しは期待していたが、それは無くなった。
「けどなボウズ、それを知ってるかも知れねぇ奴の情報はあるぜ。」
「本当か!?」
店主は身を乗り出してトオルに言ってきた。やはりとても愛想がいい。そしてトオルもそれに食いついた。レイトも流石に興味を持ち始めてきた。自分の持っている魔法石はとても強力だ。しかし魔法石を持つ身としては、やはりそれよりも強い真魔石に興味がある。
「前払いだ。」
「…。」
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