scene20 Would Link Travel examination
《昨夜7時ごろ、政治家のヘンリー・フィラディック議員の自宅に、指名手配犯のファイヤーエドウェイズ容疑者が侵入し、金品等1700万ゲルク相当を奪い、逃走しました。》
ビルの巨大なテレビスクリーンでは、昨夜のニュースが放送されている。
《尚、フィラディック議員は、エドウェイズ容疑者に襲われ首に重度の火傷を負っており意識不明の重体。意識が回復する確率は高くないようです。更に、犯人逃走の際に、現場指揮官のダグラスさんが犯人から殴られ軽傷を負っています。》
市民はその巨大スクリーンに釘付けになっている。その横を、トオルたちは通り過ぎていった。
ガヤガヤ…。
人々がたくさんいるここは、列車の駅のホーム。この世界の列車は全てがリニアモーターカーだ。定刻どおりに到着した列車にトオルたちは乗り込んだ。トオルたちの行き先はワールドリンクトラベルの資格取得検定だ。
「トオル、この駅だよ。」
「おお。」
3駅先で降りたトオルたちは、地上15mにある駅の建物からエレベータを使って地上に降りた。セントラル第2の都市、リースラン。この都市に検定所がある。
「なあなあ、ワールドリンクトラベルの試験てどんなことするんだ?」
「さあ、僕も良く知らないし、受付の人も説明してくれなかったからなぁ。」
ガー
検定所の建物はさほど大きくなかった。やはりそこは受付所並の3階建てビル。自動ドアを通り内部に入った。どうやら内装は受付所とほぼ一緒らしい。
「はーい、あなた達が今日来るって言ってた子たちね。」
受付台の前に、20台半ばくらいの女性が、セミロングの髪をなびかせながらやってきた。
「今日の受験者は君達だけだからさっさと終わらせようか。おーい、トージ。試験管よろしく。」
受付の女性が受付台の奥から人を呼んでいる。
「はいよ。」
奥から出てきたのは若い男性だった。地球の黄色アジア人に近い顔立ちをしている。要するに日本人、中国人似だ。
「君達が今日の受験者だね。僕の名前はトージ・ロックネス、よろしく。」
三人は早速一つ目の試験会場に来た。大きな部屋だ。部屋の対角に計二つ、何やら魔方陣が書かれている。するとトージは考え込んでいる。
「トージさん?どうかしたんですか?」
レイトが恐る恐る訊いてみる。
「いや、…試験の内容を忘れちゃったんだよ。」
真剣な顔をして返してきた。その部屋は一瞬何かが止まった。
「さ、試験を開始しよう!」
あれから10分、どうやら受付嬢に訊きにいってたらしい。
「最初の試験は…魔法石を使ったワープの試験。」
「!」
「…冗談だろ?」
「本気本気。」
トオルの引きつった言葉にも平気で返してくる。今度はレイトが喋りだした。
「トージさん、ワープといったらワールドトラベラーが世界間を移動する際の手段です。準備体操としてやる試験もなしにいきなりこれはおかしくありませんか?」
「おかしいも何もこれがメニューさ。今までこれで通してきている。」
二人は絶句した。最初の試験でいきなりワープ。これは世界を移動する際に使用する手段であり、最も難しいと言われている。頭にこれが来て最終試験はどんなものなのか想像が付かない。
「さあ、受けたくないならリタイアしても構わないよ。この試験は1人で何回も受けられるからね。」
「やってやるよ。いつ来ても内容が一緒なら今でも後でも変わらねぇし、何せ俺には時間が無いんだよ。」
二人の大きな覚悟とは裏腹に、トージはとんでもないことを仕組んでいたことに、トオルたちは気付いていない。
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