scene19  唐突な対面

ファイヤーが屋敷の門を出ようとしたところだった。外をBEの警官達が包囲している。
(まさかあの野郎!)
遅かった。ドアが燃やされたときに、既に家主はBEに出動要請をしていた。
「指名手配犯、ファイヤー・エドウェイズ。貴様は完全に包囲された。大人しく投降すれば手荒な真似はしない。」
BEの警官の周りには大勢の野次馬がいる。閑静な住宅街で起こった大きな事件に、皆興味津々だ。
「ちっ、しゃーねーな。投降するよ。」
ドサッ
ファイヤーは盗んだものを足元に放り、両手を挙げた。
「門を開けろ。」
一人の警官の声で、その家の門が開いた。すると大勢の警官が一斉に入り込み、ファイヤーの周りを取り囲み銃を向けていた。
「おいおいやめてくれよ。こっちは降参してんだぜ?」
疲れた顔でファイヤーが言った。現場指揮官らしき人物がこちらに向かってくる。
「ファイヤー・エドウェイズ。お前を不法侵入、殺人未遂、窃盗の現行犯で逮捕すルッ…ウゥ。」
ファイヤーの右拳が現場指揮官の腹に入った。そいつはその場に倒れこんだ。ファイヤーは足元の窃盗品を取り、門の外へ走り出した。包囲していた警官は一斉に発砲しだした。
「はん!撃つね撃つねぇ!」
ファイヤーはまんまと弾を避けながら、すんなり門の外に出てしまった。そして野次馬の中に突っ込んでいった。野次馬は自分が被害に遭いたくが無いために、ファイヤーに道を譲っていく。そして軽くその場を逃げ切ってしまった。

トオルたちは同じく住宅街を歩いていた。T字路に差し掛かった。
ドンッ!
「ってぇ!!」
「っぐ!!」
「ってえな!ボケッ!しっかり前見とけ!」
「何だと!お前からぶつかって来たんだろうが!」
ぶつかってきたのはファイヤーだ。ファイヤーの売り言葉に、トオルの買い言葉。
「すいません。僕達が悪いんです。どうか許してください。」
「あ、レイト!」
レイトは自ら頭を下げる。
「チッ」
ファイヤーは舌を打つとその場を走り去ってしまった。
「レイト、何で謝ったんだよ。」
「いや、こっちが謝ったほうが早いと思って…。」
ふてくされるトオルをよそに、レイトはファイヤーの後姿を目で追った。
(あれは、トオルの探している真魔石の所持者の一人。指名手配犯ファイヤー・エドウェイズ。)
一方走り去るファイヤーも。
(今のは確か…。…俺はあいつを知っている。)

真魔石の所持者、ファイヤー・エドウェイズ。思いも掛けないとこで出会った3人。このことが後にどう影響するのか。それは誰も知らない。だが少なくとも言えることが一つ。これがトオルと真魔石との初めての小さな接点。

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