第3部

2月23日、いよいよオープン戦が開幕した。阪神の相手は昨年のパ・リーグの覇者、西武ライオンズである。高木は試合1時間前に球場に到着した。
今日のオープン戦に高木は確実に緊張を持っていた。出れる出れないは関係なく・・。とにかく高木は他チームの1軍選手を目にするのは初めてだった。
オープン戦初戦が始まった。初戦から阪神は不利な状況だった。金本、片岡、今岡を怪我で欠いていた。しかしこの状況は高木にとっては都合がよかった。今岡が出場できないとなると二塁のポジションが空く。
高木は7番セカンドで先発出場した。すると阪神は生まれ変わったところを西武に見せ付けた。ランナー1塁の場面で4番濱中が右中間三塁打を放ち先制点をあげたのである。正に速攻だった。その後も5番アリアスが続き濱中をホームに帰した。
次の回に先頭打者として打席に立った高木だがセカンドゴロに終わった。
一方西武野手陣は阪神の先発安藤に4回を散発3安打に抑えられた。その後も阪神は見事な継投を見せてくれた。
2打席凡退に倒れている高木は3打席目に賭けた。
(初打席はセカンドゴロ2打席目はセンターフライ。タイミングは合ってきているはずだ。)西武の投手は潮崎。初球、内角の直球。高木は見逃しストライク。2球目も内角に直球が来た。これに裏をかかれた高木は2-0と追い込まれてしまった。
潮崎の球は恐らく140km/hに到達しただろう。仕上がりの早いベテランに正直高木は戸惑った。そして3球目、外角に球が来た。高木の予想していた通りだった。疑わずに振った。だが球は外に逃げた。スライダーだ。かろうじてバットに当たった球は1塁手後藤の頭上を越え、右翼手小関の前に落ちた。
西武に2点を取られたものの阪神は3点を取って勝っていた。最後はルーキーの中村がピシャリと抑えゲームセット。見事阪神は初戦を勝利した。

その後も阪神は快進撃を続けた。高木もオープン戦では2割9分、本塁打1本という成績を残し、1軍に残ることが出来た。

しかし高木は同時に不安も抱え込むことになった。右足の太ももの張りの発生率が目に見えて上がったのである。同時に膝も痛めてしまうという正に泣き面に蜂状態だった。
だがトレーナー曰く、両方とも一時的なもので練習を軽いものに変えれば問題ない、とのこと。高木は安心してシーズン開幕を迎える準備が出来た。

~続く~

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